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2002年4月 NO.126

 肝臓病(上)C型肝炎
 肝がんに進展させない治療が大切
 肝炎ウイルスを追い出すインターフェロン療法

山岡 伸三
愛媛・新居浜協立病院

急増する肝がん
80%はC型肝炎に関連

 C型肝炎を述べるにあたって、まず肝がんについて触れる必要があります。
 肝がんが近年著しくふえており、この肝がんの80%前後が、C型肝炎ウイルスに関連したものだからです。2000年に日本肝臓学会から『肝がん白書』という小冊子が刊行されました。その序文には、下表のような発刊理由が述べられています。
 このうちの3にある 「医療事情」とは、C型肝炎ウイルスが発見される以前の輸血や、使い捨て注射器が普及する以前の予防注射などのことです。この時期の輸血や注射器の使い回しによって、ウイルスが広まったのです。
 こうした5つの理由から『白書』では、「肝臓病に携わっている医師、研究者のみならず、医学界さらには厚生省はもとより地方自治体など、社会全体がこの肝がんに対して特別な関心と撲滅のための努力をしなければならない・・・」と決意が述べられています。


 日本の肝臓病(慢性)の原因の8割がウイルス性肝炎で、その約70%がC型肝炎です。
 C型肝炎が20〜30年で肝硬変になり、さらに10年で肝がんへと進展するというのが典型です。だからこそ、進行させないための治療が重要になります。
 日本肝臓学会が監修した『慢性肝炎診療マニュアル』 では「慢性肝炎(B型も含む)」患者さんへの説明のポイントとして6点を上げています。

@感染症であり、他人への感染源となりうること
A日常生活を行うための肝機能は保たれていること
B症状が進行すれば肝硬変になること
C肝がん発がんのリスク(危険)があること
D炎症の程度は変化し、急にひどくなることがあること
E炎症の程度により生活の制限が必要なこと

 感染の問題や検査、治療法に関してはあとで触れますが、少なくとも今日明日どうかなるという病気ではなく、ある意味では高血圧や糖尿病といった慢性疾患のひとつだという点を理解していただきたいと思います。

患者のおかれている状況は?
本人には何の責任もないのに

 昨年11月に肝臓病患者会の全国組織である日肝協(注)の全国代表者会議と全国肝臓病患者交流のつどいが、愛媛県松山市で開かれました。私も医療講演会に参加しました。講演のあと、活発な質問がかわされていましたが、多くは「自分はこういった病名で、こういった治療を受けた」「この最新の治療法はいつ頃可能なのか」など、自らの病気を自らのものとして受容し、学習し、闘病している姿がうかがえました。 一方、数年前になりますが、患者会活動の一環として肝臓病電話相談にとりくみました。件数は多くありませんが、診断や治療に関する疑問や質問のほかに、「息子の縁談の相手からC型肝炎であることを打ち明けられた。どう考えたらいいのか」「インターフェロン治療のために入院をすすめられたが、会社の同僚や上司に病気の話をしていないので因っている」など深刻な悩みも聞かされました。
 全国で200万人ともいわれるC型肝炎の患者さんは、本人には何の責任もない原因によってC型肝炎ウイルスに感染し、肝硬変、肝がんへ進展する不安を持ち、また感染症ゆえの偏見や差別を感じながら生活を送っています。
 前述の『肝がん白書』 のいうように、社会全体が特別の関心をもち、撲滅のための努力をしなければならないと思います。
 また、現状ではワクチンなどによる予防はできませんが、肝硬変、肝がんへの進展予防、早期発見の手だてもみえてきています。患者さんと医療従事者が一緒になって医学の到達を学び、理解し、病気を克服していくことが大切になっています。

血液検査と腹部超音波検査で
多くの情報がわかる

 C型肝炎をはじめとした慢性の肝臓病は、何か自覚症状があって医療機関を受診するといったことはほとんどありません。多くは、健康診断や人間ドック、何か別の病気で受診したときなどの血液検査で「肝機能異常」を指摘されてわかるのです。
 このときの血液検査の、AST(GOT)やALT(GPT)といった検査項目は、肝細胞の壊れぐあい(炎症の強さ)をあらわします。肝炎を″家の火事″にたとえれば″炎の強さ″にあたります。
 肝機能異常を指摘された方が医療機関を受診されたとき、多くの場合あらためて血液検査と腹部超音波検査がすすめられます。
 血液検査では、肝臓病の次のようなことをつかみます。
 まず、肝臓の炎症の強さ (AST、ALT)、肝細胞の機能低下の程度(アルプミンやプロトンビン時間、ビリルビンなど)、肝臓が固くなる「線維化」 の程度(ZTT、TTT、ヒアルロン酸など)などです。
 これらの異常は、先の″家の火事″にたとえれば火事の持続によって家がどの程度″灰″になっているかをあらわします。終着駅は肝硬変です。 また、肝炎ウイルスの存在も血液検査でわかります。C型肝炎に関してはまずHCV抗体(C型肝炎ウイルス抗体)を測ります。これが陽性で、先ほどのAST、ALTなどが異常であれば、ほぼC型肝炎と診断されます。
 最近では、C型肝炎ウイルスの遺伝子を調べるHCV−RNA検査や感染しているC型肝炎ウイルスの種類や量も、血液検査でわかるようになりました。
 腹部超音波検査では何がわかるのでしょうか。一つには、「肝硬変になっていないか」「肝がんができていないか」など慢性肝炎の進展ぐあいがチェックされます。
 二つ目には、「肝臓に脂肪が沈着(脂肪肝)していないか」「胆のうや肝臓内に結石がないか」など、慢性肝炎以外の病気との区別がチェックされます。苦痛のほとんどない方法で多くの情報が得られる有用な検査です。

C型慢性肝炎の腹腔鏡写真。肝臓の表面の凹凸は軽度で赤みもなく落ちついた肝炎

 

 

 

 

インターフェロン療法
肝炎ウイルスを追い出す

 それでは、C型肝炎の治療について説明します。
 C型肝炎の治療の目的は、何よりも肝硬変、肝がんへの進展を食い止めることです。C型肝炎そのもので命を落とすことはありません。肝硬変、肝がんへ進行しない限り、健康な人たちと同様の人生を送ることができるのです。
●3割の人からウイルスが消えた
 最も期待されている治療が、インターフェロン療法です。
 インターフェロンとは、もともと人間の体内に存在する物質で、外敵(ウイルス)を追い出す働きをもっています。これを注射で投与することでC型肝炎ウイルスを追い出そうとする治療法です。
 先ほどからの″家の火事″にたとえれば、原因となっているガスの元栓をしめるような治療です。
 一般的には、筋肉注射で毎日2週間、その後週3日行ない、全体で6ヵ月間続けます。その効果は、インターフェロン療法を受けた人の約3割で、C型肝炎ウイルスを完全に追い出すことができた(著効)とされています。
 感染しているC型肝炎ウイルスの種類や量によってこの効果を比べてみると、インターフェロンが効きやすい種類のウイルスで量も少ない場合には、80%以上の方が著効を示したといわれています。一方、インターフェロンが効きにくい種類のウイルスで量も多い場合には、10%も効かないといわれています。
●抗ウイルス剤を併用して
 現在、こうしたインターフェロンの効かない患者さんに対して治療効果を上げるための研究がさかんに行なわれています。
 昨年末には、「リバビリン」という抗ウイルス剤(内服薬)が一般医療機関でも使用可能になりました。従来のインターフェロンと併用して投与することで、10〜50%効果が上がったと報告されています。
 その他にコンセンサスインターフェロンといって、これまで発売されたインターフェロンの遺伝子の良いところだけ集めたようなインターフェロンも発売されています。
 いずれにしても、インターフェロン療法は、悪寒、発熱、脱毛、間質性肺炎、不整脈などつらい副作用や危険な副作用もあります。主治医と十分相談することが大切です。
 しかしインターフェロン療法は、肝がん予防の意味でも期待されています。条件が整えばぜひチャレンジしていただきたいと思います。

インターフェロン以外の治療法
炎症をおさえ進展おくらせる

 インターフェロン以外の治療法はどうなっているのでしょうか。
 現状では、インターフェロン療法以外にC型肝炎り・イルスを追い出す治療法は残念ながらありません。
 しかし、肝機能検査値(ALTやAST)を改善させる治療はいくつかあります。″家の火事″にたとえれば、燃える炎に水をかけるような治療です。
 注射では、グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンCなど)、内服ではウルソデオキシコール酸(ウルソ100など)などです。これらの治療によってAST値を80以下に安定させ、肝硬変や肝がんへの進展を減らし、遅らせることができます。ただこれらの治療は可能な限り継続する必要があります。
●身体の抵抗力を高めて
 食事や日常生活上のことをよく聞かれます。
 あまり神経質になる必要はありませんが、たんばく質やビタミン豊富な食事を規則正しくとること、夜ふかしや徹夜など不健康な生活をさけることは心がけましょう。 身体の抵抗力を高め、精神的安定を確保し生きがいをもった生活を送っていくことが、C型肝炎を克服していく上で大切だと思います。

日常生活での感染はないが
性交・出産に注意を

 前述しましたように、多くのC型肝炎患者さんが「家族や他人に肝炎をうつしてしまわないか」という心配をされています。感染症である以上この問題はさけて通れません。
 まず、C型肝炎ウイルスは血液を介して感染する病気ですから、普通の日常生活で感染させてしまう心配はまったくありません。食事(食器)、入浴(浴槽)、洗濯など共同生活も心配することはありません。
 ひげそり、歯ブラシ、生理、けがなど血液が関係するところは個人専用にする、自分で処理するなどの注意が必要です。献血もできません。子どもに口移しで物を与えることも避けましょう。
 最も問題になるのは、性交と出産です。C型肝炎はB型肝炎とちがってまだワクチンが開発されていませんので完全な予防は困難です。
 しかし、B型肝炎と比べて感染力は約1000分の1といわれています。夫婦間の感染は年間約1%、出産時の出生児への感染は2・3〜5%という報告があるそうです。いずれもごくわずかですがゼロでないことも事実です。不特定多数との性交をさける、生理前後の性交をさけるなどの対策も大切です。

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日本肝臓病患者団体協議会とは

 日本肝臓病患者団体協議会 (以下日肝協) は、肝臓病を抱える患者・家族の 「治りたい」「治したい」という切実な願いを実現するために1990年9月に設立されました。全国の患者会の連絡協議会という役割です。
■電話相談や肝炎110番ひらき
 活動としては、患者の実態と要求を把握するために、東京事務局に「電話相談室」を開設。年1回全国数ヵ所で「肝炎110番」を開さ、医療従事者や弁護士の協力を得て、相談活動を行なっています。
 また、全国の患者・感染者からよせられた声をもとに、▼肝臓病の正しい知識の普及と啓蒙、▼肝臓病の研究(予防・治療)の推進、▼医療費公費負担の実現、▼肝炎患者の生活保障の実現という基本的要求をかかげて活動をしています。
■急増する肝がんの予防のために
 日本のウイルスキャリア (持続感染者) は、B型で140万人以上、C型で200万人以上と推定されています。急増する肝がんの予防対策は急務となっています。
 そのためには、ウイルス検査の拡充と受診率の向上について、特段の周知徹底が必要で、特定されたキャリアの健康管理と適切な治療体制を整備することが求められています。
 この実現のために、日肝協では次の3点を国に求める請願署者名にとりくんでいます。
 @慢性肝炎、肝硬変、肝がんなどの治療薬、治療法の開発を促進し、今ある治療薬・治療法の制限を緩和すること
 A平成14年度から実施される「基本健康診査」における肝炎ウイルス検査の広報を充実し、受診率の向上をはかること、職域における検診の勧奨、保健所、市区町村保健センターなどで検診が受けられるようにすること
 B全国すべての「二次医療圏」ごとに、一般臨床医と専門医との連携システムの構築、B型・C型肝炎ウイルスキャリアの健康管理と治療体制の整備、相談窓口の設置


日肝協の連絡先 03・5982・2150
電話相談は平日の朝10時〜午後4時半までです。


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