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2002年10月 NO.132

 「健康診断の結果」
 健診データは
 「元気で長生き」への入り口

長谷川 吉則
千葉健生病院・内科医師

 みなさんは、「健康診断」というと、どんな印象をお待ちですか?
▽異常が発見されるかもしれないから、こわい
▽受診するといつも「体重を減らしてください」といわれるので、健診を受けるのはおっくう
▽食事など日ごろ気をつけているので、調べてもらうのが楽しみ
▽とくに生活に注意はしていないが、健康のバロメーターの一つにしている
▽会社でやるので義務と思っている− など、人それぞれだと思います。
 私たち医師は、みなさんが健診結果を入口にして、自分らしい健康状態に向けた生活調整に健診結果を上手に利用してほしいと願っています。健診結果の正常化がゴールではなく、健診を通してみなさんが元気になること、そして職場や地域が元気になることを願っています。
 ここでは、こうした健康づくりの一環として大切な意味をもつ「健診結果の見方」について、説明しましょう。

「異常」 「再検査」 の人は

 まず、「異常」「再検査」という指摘を受けた方についてです。

血圧が高いといわれたら

 「血圧」とは、心臓から押し出され全身をめぐる血液が、「血管の壁を押す圧力」です。
 みなさんもなじみ深い血圧計では、水銀柱を押し上げる高さで測定し、単位はmmHg(ミリ水銀)です。130/85未満が正常の血圧、140/90以上は高血圧です。
 血圧が高い状態が続くと、動脈硬化をひきおこし、心臓病や脳卒中の原因となります。高血圧の原因の90%は「本態性高血圧」ですが、腎臓や内分泌の異常からおきる「二次性高血圧」のこともあり、若年の高血圧はとくに精密検査が必要です。
《高血圧を予防するポイント》
食塩は一日7〜8gに
 塩分は血管の浮腫 (むくみ) をひきおこして血圧を上昇させ、血管の老化を早めます。また、血流量を増やし、心臓の負担を高めます。
太りすぎに注意
 肥満と高血圧の関係は、体重が増すと高血圧者の割合がふえます。主食や脂肪の摂取量を見直し、間食もエネルギーの少ない食品にしましょう。一日一万歩のウォーキングなど運動を心がけましょう。
疲れ過ぎやストレスの解消
 疲労をためないよう、十分な睡眠時間をとりましょう。スポーツや趣味などでストレスの解消を。
タバコ・アルコールに注意
 タバコは動脈硬化を進行させます。健診をきっかけに、ぜひ禁煙の努力を。アルコールは、適量なら動脈硬化の進行をおさえ、寿命を延長させますが、飲み過ぎると血圧を上昇させます。適量は日本酒なら二合以内です。

尿検査で異常を指摘されたら

 尿検査は主に「尿たんばく」「尿糖」「尿潜血」の三つを調べます。尿たんぱくの陽性は、まず腎臓の障害が疑われます。尿の再検や腎臓の検査が必要となります。
 尿糖の陽性は、糖尿病が疑われ、血糖検査や糖負荷検査が必要となります。
 尿潜血の陽性は、腎臓から尿道までのどこかで出血がある、ということです。潜血の量や経過によっては腎臓や泌尿器の検査が必要です。

コレステロールや中性脂肪が高いときは

 コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が高いと、動脈硬化を起こします。
 コレステロールは、じつは、ホルモンの原料となり、体の細胞の壁を作るなど、大事な成分です。少なすぎると寿命が短くなり、ガンの発生も多くなることが知られています。多すぎず少なすぎない、適度な値が一番いいのです。
 コレステロールや中性脂肪の高い人は、食生活に気をつけ、運動を心がけましょう。運動は、中性脂肪を減らすだけでなく、「HDLコレステロール」というものをふやします。これが、血管にたまった動脈硬化の原因となるコレステロールを肝臓に運んで処理してくれます。

肝機能に異常ありといわれたら

 肝臓病は無症状のことが多いのです。異常が指摘されたら、まず精密検査を受けましょう。
 肝障害の原因はいろいろありますが、働き盛りの年代に一番多いのが、脂肪肝です。日本酒換算で毎日三合以上を五年程度飲み続けるとおこりやすい、といわれています。太りすぎが関係していることも多く、禁酒して食事に気をつけ、運動を心がけると、わりあい早く改善します。
 ウイルス性肝炎を起こしているケースもあります。B型やC型の肝炎では肝硬変や肝ガンに進行することもあり、精密検査が必要となります。
 いま、C型肝炎のウイルス検査を一般健診と同時に実施している自治体もありますが、肝障害のある人に対象が限定されています、無症状の人もありますから、四〇歳以上は希望者全員に実施できるよう、自治体に求めていく運動が必要ではないでしょうか?

血糖値が高いといわれたら

 糖尿病が疑われます。血糖の結果によっては糖負荷試験をします。「境界型」といって、糖尿病予備群の状態のこともありますが、予備群を含めて「食事療法+運動」で適切な体重を保つことは、糖尿病にたいする基本戦略です。
 糖尿病は、悪化すると、細小血管と大血管の両方に血管障害をおこし、網膜障害、腎障害、神経障害や心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患をおこします。
 これらの合併症を予防するには、平均的な血糖の状態を表すとされるヘモグロビンA1Cを6.5以下に保つことが必要とされています。

胃潰瘍があるといわれたら

 最近は、胃・十二指腸潰瘍の原因はピロリ菌という細菌の感染によっておこるとされています。ピロリ菌は口から感染するといわれていますが、感染の予防はどうしたらよいかまだわかっていません。
 潰瘍の発生にはストレスやタバコも関与しており、禁煙とストレスの解消を心がけましょう。

心臓に異常ありといわれたら

 心電図でわかる心臓の異常は、主に狭心症や心筋梗塞、不整脈、心肥大です。狭心症や心筋梗塞(虚血性心疾患)は、心臓の筋肉に血液を供給している血管がつまるなどして血液が流れなくなっておこります。主として動脈硬化が原因です。虚血性心疾患が疑われるときは、すぐ受診してください。

眼底検査に異常があったら

 眼底は、血管のようす、動脈硬化の有無や程度を、直接見ることができる場所です。視神経の状態や緑内障についてもある程度判断できます。眼底出血など異常があれば、眼科を受診しましょう。

肥満気味といわれたら

 肥満になると、高血圧、動脈硬化がおこりやすくなり、心臓病・脳卒中の危険性を増し、糖尿病、脂肪肝や膝関節疾患も多発します。肥満は成人病の温床です。
 肥満の方は、以下の点に気をつけましょう。
@一日三食きちんととる
A食事はゆっくりよく噛みましょう
B野菜・魚中心の食生活に
Cお酒を飲み過ぎない
D間食を控える
E一日300キロカロリー前後の運動を
Fストレスをためない
G週に一度は体重のチェックを

「要観察」がたくさんある人は

 健康診断の検査項目は、多くの病院・診療所で「異常なし」「ほぼ異常なし」「経過観察、要注意」「要精査」「要治療」などの五段階評価をとって
行なわれています。
 「要精査」や「要治療」などがなく、「経過観察、要注意」などが多項目にわたる方は、どう考えたらよいでしょうか?
 健康でもない、けれどもはっきりした異常があるわけでもない、いわば「半健康状態」といえます。この方たちは、積極的な健康を実現できるよう、健康につながる生活習慣を身につけていくことが課題ではないでしょうか。

「異常なし」の人へ

 とりあえず、健診項目については異常がなかった、という点では一安心です。しかし、その時点で異常がなかったということですので、一年に一回は健診を受診してください。症状があれば医療機関をすぐ受診しましょう。


「健康は自助努力で」というけれど

 ことしの通常国会では、健康保険法の「改正」案が成立しましたが、これと同時に「健康増進法」が成立しました。この法律は、国民の責務として「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、・・・自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない」(第二条)と規定しています。
 しかし、憲法第二五条にもとづく国民の健康権を保障するという、国の責務はないがしろにされています。あたかも、「生活習慣が悪いから病気になったのだ。だから個人の責任で病気を治し、健康になりなさい」といっているようです。ほんとうにそうでしょうか?
 病気の問題、健康の間題は、個人の努力だけでは解決できません。
 いま、働くもの(自営業者、農民も含めて)の生活や労働の実態には、大きな問題があります。
 不況やリストラがひろがる下で、必死に働いている姿、具合が悪くなっても休めない実態があります。労働環境や公害を含めた生活環境の問題もあります。高齢者でも、こうした過去の労働や生活の影響を無視できません。医療の受けやすさにも格差があり、その格差は拡大しているのが現状です。
 政府や自治体には、国民が病気にならず、健康が増進される社会的環境をつくる努力、病気になったら安心して受療できる社会的環境をつくる不断の努力が求められます。また、社会保障の切り捨てを許さず拡充させる運動がないと、国や自治体の努力も進みません。
 同時に、国民一人ひとりが自分の健康に関心を持ち、健康管理をしていくことも大切なことです。
 私たち民医連の病院・診療所では、共同組織のみなさんとともに健康診断をはじめ、健康診断後の報告会や保健大学などの健康講座、スポーツやレクリエーションを含む保健予防の活動、職場や地域での健康づくりにとりくんでいます。


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