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「茶道会」を楽しむ

 先日、「茶道会」という、 日本にいたら開かないような 会を開いた。英語で言えばジャパニーズ・ティー・セレモニー・パーティといい、なんか響きが軽く、気軽に足を運んでくれるにちがいない。そしてその通り、なんと30人以上の人が家にやって来た。
 
 この茶道会を催すにあたり小さな招待状を作った。「3時から6時までの間、都合のいい時間にきてくれたら日本のお抹茶を出しますよ。友達も誘ってきてね」というような事を書き、友達や知人に20枚ほど配った。
 当日は部屋を掃除し、限りはあるがお茶の道具を整えた。時間を持て余していた夫ディージユが外から紅葉を4、5枚拾って来て床の上にちりばめた。この男、茶道を習った事もないのに、こうして季節を部屋に取り入れるなどなかなか茶道というものを心得ているではないか。お茶菓子にチョコレートを選んだ自分が少し情けない。
 私は秋の紅葉をイメージして赤い着物に着替えた、まさに「ミネソタの日本人ここにあり」という感じで、人生のクライマックスとも言えるべき時がこの茶道会で繰り広げられるのだ。茶道を習っておいて本当によかった。着つけの講習に行ってよかった。日本舞踊も2ヵ月間だけどなんかやってよかった。茶道会で誰かに「ちょっと日本の踊りを踊ってくれ」なんて頼まれても「それじゃ一つ」といって場を盛り上げる事ができる。サービス精神旺盛の私はこのようにこの茶道会に万全を期した。
 茶道会に来た人たちは大変まじめであった。みんな慣れない正座をし、心を静かにして私がお手前をしている様子をじっと見ている。途中で説明を入れましょうか?と聞くと「いや、なるべく本物の茶道の雰囲気を味わいたいから、そのまま続けてくれ」という。しかし、お茶を習った事があるとは言え、その作法などいちいち覚えているはずもない私に、どこまで本物に近い茶道を再現できよう。ちょっとふくさをたたんでみたり、茶さじを拭いてみたりと思いついた事をして適当にごまかした。お茶碗にお湯を注ぐ時は横に置いた電気ポットからゴポゴポと入れていたが、まさかあれはみんな本式とは思っていないだろう。
 はじめて口にする抹茶は彼らの味覚に新しく、「思ったより濃い」とか「苦いけどチョコレートを食べた後に飲むとおいしい」などいろいろな感想が出た。
 ひととおりお茶き飲み終えると、今度は質問攻撃にあう。「お茶をシャカシャカたて続けると泡が溢れて茶碗からこぽれるのか」と真顔で聞かれた時には腹を抱えて笑いたかった。ある知人が「どういうような時にこのような茶道会をするのか。この茶道会を開くことはあなたにとってどのような意昧があるのか」というややこしい事を聞いて来た。私はふと考え込んだ。前で述べた通り、私が日本にいたら、まずこんな茶道会なと開かないのだ。なせだろう。作法を知らなければお抹茶も楽しめないわけではない。日本は独自の豊かな文化に 囲まれているにもかかわらず、それを創造的に楽しむ自由を失ってはいないだろうか。それは大事な物を押し入れにしまい、いつのまにか、あることさえ忘れてしまうようなものなのかもしれない。


 私が押し入れから取り出したお茶の道具ほ、みんなが楽しんでくれたことでとても喜んでいるようだった。そして私たちは、なにより茶道会を通して友達が友達を呼んで、豊かな時間を過ごせたことがうれしかった。日本の秋は今ごろさぞ美しいだろう。
 数枚の紅葉とおいしそうな和菓子をみつけたら、会いたい友達を誘って、あなたなりの茶会を楽しんでみてはいかがだろうか。
(題字・イラストとも筆者)

村岡 由美子
*プロフィール*
  1971年大阪生れ。奈良・岡谷病院で看護婦として勤め、1996年にアメリカ人のヒースと結婚し渡米。
 現在は、非営利団体で「家を建てる」ためのボランティアコーディネーターをするなど、あらゆることに挑戦しながら絵日記エッセーをかく。

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